「ただいま」って言える場所をふやそう
アトリエ・アルケミストは、東京・町田市にある開設18年目を迎える絵画造形教室です。
わたしたちはアトリエを、ふたつの社会活動の事務局をそなえた施設に変身させるため、クラウドファンディングに挑戦することにしました。
社会活動のひとつは、感覚を働かせる楽しさをアートワークショップで伝える活動。
もうひとつは「ただいまといえるような、まちの居場所づくり」を支援する活動です。
このふたつの活動グループの拠点を現在のアトリエ・アルケミストと同じ建物につくり、2020年末にはアルケミストの運営と並行してこれらの活動が始められるよう、活動の場を整備する資金の一部をクラウドファンディングで賄おうとしています。
それは、18年間「そのひとの制作のそばにいる」毎日から出てきた、わたしたちの危機感がもとになっています。
長年絵画造形アトリエを続けていて、ここ8、9年のこと。
お子さんの様子に変化がみられるようになりました。
「のこぎりはまっすぐに引けばいいんだよ」と言っても、
「手首の力の入れ方そのものがわからない」。
はさみを使うための、微妙な力の入れ具合がわからなくて、紙がくにゃりとまがってしまう。
そんな子が急激に増えてきたのです。
のこぎりやはさみが上手につかえなくても、学校の成績は下がりません。
でも、ふとした動作ができないことは、成長がすすむにつれて、どういう結果を招くのだろう?
日々、このような光景を目の当たりにするわたしたちは、大きな危機感を覚えるようになったのです。
お子さんの変化を目にしつづけた私たちは
「大きなことはできなくても、自分たちができることをしよう」と考えるようになりました。
「身体や感覚を使うことって楽しいよ」
「だれかとアートでやりとりするってわくわくするよ」
と伝えるために、アートワークショップをたくさん展開するようになったのです。
ですが、私たちはすぐに「これでは足りない」と感じるようになりました。
ワークショップは一種のお祭りのような、「一回限り」のものです。
出会うきっかけとしてはいいけれど、継続性がない。練習にならないのです。
そこで、「継続して活動を体験できる場をつくりたい」と考えるようになりました。
「元気?」「最近さあ・・・」
アトリエのちびっこは、それぞれが好きな制作をしながら
あるときは「しん」として。
またあるときにはおしゃべりしながら時間を過ごしています。
アルケミストは、それぞれが自分のやってみたい制作をする場所です。
油絵を描く社会人。
工作をする小学生。
のこぎりを使う中学生。
編み物をする大人の女性。
同じ部屋の中でそれぞれに違った制作が広がる風景が、ここでの日常です。
つくることが好き、というつながりで、さまざまなひとが出会うこと。
他愛もない話をしながら、手を動かすことで学ぶ、たくさんのこと。
「すきなこと」のつながりで人が集う場を支援していきたい、と考えています。
さらに今年、年明けにアトリエに舞い込んだ1枚の契約書が私たちの行動を後押しすることになります。
それは、18年続いたこの場所の賃貸契約が「来年3月で終了する」という内容のものでした。
「この場所をずっと使っていいよ」と言ってくださっていた大家さんが一昨年他界し、慣れない大家業務を奥様が引き継いでくださっていたのですが、ご高齢のためこの物件を手放すことにしたのです。
様々な活動をはじめた矢先に、わたしたちは「引っ越すか」「この場を買い取るか」の大きな決断を迫られることになりました。
「引っ越すか、買いとるか」と言われても、買い取るような大きなことは、まったく想像もできませんでしたし、引っ越すほうがずっと現実的だと考えていました。
そんななか、ずいぶん前にアトリエをやめていた男の子が、アトリエにふらりとやってきました。
小学4年生から6年生までアトリエに通っていた男の子。受験のためアトリエを離れて以来です。何年振りでしょうか。
「変わらないなあ」とつぶやいた彼は「いまこういうの書いてるんだ」と自作の詩をみせてくれました。
いまやっていること。浪人生になったこと。大学受験のこと。色々話して、彼は「ここに来たこと、お母さんにはないしょだよ」と笑って帰っていきました。
私たちは改めて気がつきました。「ここを覚えているひとがいるんだ」と。
いつくるかわからない人たちだけれど、できればここで迎えたい。
彼らが小さいころに過ごしたものがあるこの場所で、話をききたい。
それでわたしは、皆と相談して、この場所にいつづける努力をしてみよう、と決めました。
できるかどうかはわからないけれど、とにかくやってみようと思ったのです。
決断の引き金は、男の子でした。でもそれだけではありません。
長年障害を持つ子どもの作業療法を行ってきた米の療法家、アナット・バニエルは「心地よさや好奇心が学びのスイッチをオンにする」と述べています。
18年作り込んできたこのアトリエは、どうしたら心地よく制作に集中できるか、どうしたらほどよい距離感をもちながら親しく制作ができるかの創意工夫が詰まった空間です。
「リラックスした状態で、親しさに満ちた空間で学ぶ」ということを本気で考え続け、数え切れない工夫と改良を重ね続けた場所なのです。
春にはフキノトウを描いて
秋には柿を収穫して。
そんな環境も含めた、ここでしか味わえない「のんびりした、親しみのある空間」を活動の基盤にしたいのです。
私はアトリエアルケミストを運営するために勤めていた大学を辞め、中学校の講師収入をアトリエの運転資金にあてて10年以上を過ごして来ました。
ですので、この場を買い取り、活動拠点として存続していくための経済的基盤がありません。それでも「学校、職場、家以外」で「アートを介して」ただいまと言えるような場所、「すきなこと」のつながりでひとが集う場を支援していきたい。
NPO設立を視野に入れた、これらの活動を支えるための場所を整備したいと考えています。
具体的には
この、NPO設立を視野にいれたふたつのグループの拠点を絵画造形教室と同じ建物につくり、並行して運営をすすめていく計画で、そのための施設準備費用として、600万円をクラウドファンディングで調達したいと考えています。
クラウドファウンディングの会社は朝日新聞社関連会社の朝日エーポートさんに決定し、現在申請を進めている最中です。目標は12月頭に公開、期間は120日間です。
この期間に目標額が集まれば、それを元に不動産会社との交渉となります。
目標額に到達しなかった場合は集まった資金で引越しをし、その先でアトリエを続けながら各活動の拠点づくりをします。
二つのグループはすでに活動がはじまっており、事務局に常時待機する人材や、拠点がないことが活動が大きく進まない原因になっています。
現代作曲家宮内康乃さんとコラボレーションし、今秋11月3日に町田の商業施設パリオにて、感覚をテーマにしたワークショップ「まちだのくうき」を実施。(まちだ文化交流プログラムのイベントの一つ)
11月10日(土)には横浜市青葉区の市民公開講座で、同じく感覚をテーマとしたワークショップを行なっています。
「A&Cヴィレッジe.n.」が行なったワークショップの展覧会の実施、場所のための絵本の購入(120冊)、地元町田市の関係各所との連携、横浜市青葉区のウエブメディア NPO「森ノオト」さんでのNPO設立勉強会開催等を行なっています。
今回目標としている600万円は、施設の準備資金の一部です。目標を達成した場合は、以下の用途で使わせて頂く予定です。
2019年 | |
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1-2月 | クラウドファンディングなどによる拠点準備資金調達 |
3月 | 場所の契約 |
4-8月 | 引っ越し、または2階のリフォーム |
9-12月 | 常駐者の決定と各活動のコアメンバー決定、活動形態の確認と準備 |
11月 | 同市内の商業ビルにてお披露目ワークショップ開催 |
2020年 | |
1~2月 | 活動開始 |
絵画造形アトリエはクラウドファンディングの結果にかかわらず、ずっと運営していきます。
目標額が集まった場合は同じ場所で運営できるよう交渉します。
目標金額に満たなかった場合と、不動産会社との交渉がうまく進まなかった場合は、集まった資金で新しい物件へ引っ越し、新たな場所で絵画造形アトリエと社会活動の拠点をつくります。
2020年末までに各グループの活動を開始する予定ですが、新たな場所で始めるとなった場合は環境整備等の事情によりスケジュールが遅れる可能性があります。
18年作り込んできた、庭をはじめとした自然環境を含む基盤なしに、一からすべての場所をつくって活動を続けていくことは容易なことではありません。
もし、わたしたちの活動にご興味をもってくださるようでしたら、ぜひエーポートさんのHPと、下記の動画ををご覧ください。
今後、このHPを通じての途中経過を報告いたします。